はたおり娘
■新民謡「はたおり娘」
そこかしこにコマーシャルが流れている。
商品にもメロディーにも、特に思い入れはないはずなのに、ふとした拍子に、その曲を口ずさんでいる私がいる。
ましてや、好きな歌をくり返し耳にするならば、意識の奥底まで染みこんでゆき、きっと、心の一部になってゆくだろう。
■仕事唄=イトゥ
奄美には「イトゥ」と呼ばれる仕事歌があり、舟漕ぎ歌、田植え歌など共同作業時に歌われた。
ポピュラーなものに「稲すり節」があり、これらは、単調な作業の気慰みになっていた。
■紬のコマーシャルソング
これから語るこの歌は、紬のコマーシャルソングであり、イトゥである。
奄美を題材にした歌謡曲で、新民謡と呼ばれる歌のひとつだ。
昭和34年に嘉納 大信氏が織り子たちを取材して作詞し、三界 稔氏(島育ちの作曲者)が作曲した新民謡「はたおり娘」は、紬の織り子たちの圧倒的な支持を得た歌だ。
■親子ラジオ
当時、紬に従事する家のはた織り機のそばには、「親子ラジオ」という有線放送用の機器が備え付けられていて、終日はた織りをする婦人たちは、ここから島のニュースなど情報を手に入れていた。
しょっちゅう流れてくる新民謡「はたおり娘」を聴きながら、彼女たちははたを織ったのだ。
■歌詞
フレーズを一部紹介しよう。
♪かようオサ音 ほほえみかわす 島の名産 手織りの紬♪
♪母の形見の紬に生きる 私ゃ大島 はたおり娘 ♪
■はたおり娘の心
自分たちが奄美の経済・伝統を支えているという自負、はたおりは孤独ではなく連帯、親から受け継いだ紬で暮らしてゆくという決意!
メロディは、彼女たちへのエールとなって伝わった。
「はたおり娘の心」がある限り彼女らの大島紬が絶えることはない。